どのような内部監査部門が望ましいのか
昨日の続きです。
昨日は、望ましい内部監査部門の為に必要な事として、事実に対して真摯に向き合える部門であること。と定義させていただき、具体的なポイントを3つ上げました。
それが、
- 現状肯定
- 事実に基づく
- 未来志向
です。
今日は、この3点について、詳しく解説してまいります。
1.現状肯定 とは?
現在、問題が起きていないけれども、こりゃ問題が起きそうな状況にあるとしましょう。例えば、規程には、部門長の承認が必要と規定してあるにも関わらず、実際は、ハンコ押しているだけで、本当に承認するために必要なチェックは、アシスタントの方が、代わりにやっている。というような状況です。
よくありがちな反応は、①規程に沿って、部門長自ら承認に必要なチェックをしてください。という指摘をする。②もしくは、権限委譲書を作成させる。
どうですか?皆さんが監査人だとしたら、どのように対応しますか?
一般的には、どちらでもOKだと思いますが、この状態を「問題がある」とか「問題を検出した」と判断してしまっていたら、それは望ましくありません。なぜなら、「問題が起きていない」という現状があるからです。
たまたま問題起きてないだけ。などと言ってしまいそうですが、それだと事実を見落としてしまいます。なぜ、問題が起きないのか?掘り下げて聞いてみなければいけません。それが、現状肯定の考え方です。
例えば、作成者と別の担当者がチェックした上で、部門長に承認印を求めるようにしている。であったり、実際財務部が支払いを実行する直前に、最終確認で、支払予定先と金額を記載した一覧表と証憑のコピーを部門長に一覧で提出しており、部門長はそちらで間違い等がないかをチェックしている。であれば、どうやら規定を見直した方がよさそうです。
よくありがちな反応としてあげさせていただいたような段階で、監査判断を下してしまうようでは、真実まではたどり着けません。そうすると、担当者・チェック者のこれまでの苦労が労われたり、評価されることもなく、財務の取り組みも知ることができません。
2.事実に基づく とは?
つまり、監査人は、事実に基づいて考えなければなりません。まず、事実があります。そして、何かしらの判断基準がある。これは、法令や社内規定であることがほとんどですが、良しあしの判断基準が存在します。
この事実を基準と照らし合わせて、監査判断は初めて可能になります。
では、上述の”よくありがちな反応”のケースでは、何が足りないでしょうか?
そうです。事実が足りない。不足した事実の情報の下で、勝手な憶測を加えて基準と照らし合わせて監査判断をしています。
これは多くの人を不幸にします。また、日本企業ではこれまでずっと繰り返されてきたために、世界に勝てなくなってきている原因にもなっていることです。
誰が頑張っている(真摯に業務に取り組んでいる)のか?
部長さんですか?ほんとに?アシスタントさんじゃない?
現場で真摯に業務に向き合っている人がなかなか評価されず、部長に上がっちゃった人は、数字さえあげてて、勝ち派閥に居さえすれば一生安泰。
そんな企業づくりに監査人は貢献してはいけません。
3.未来志向
正直、指摘事項なんて見つけられなくてもいいんです。まあ、さすがに見つからないことはないと思いますが、監査人が初めて気づくことなんて、ほとんどありません。
不正などがある場合には、後工程の部署が、先に”異変”を察知しています。
事実に真摯に向き合っていれば、いつか、不正などの大問題に対して、指摘をしなければなりません。
このとき、頭ごなしに指摘をするのも、望ましい監査部門ではありません。
本当は、その「問題の原因」になっている方とともに、原状回復方法と再発防止策を考えさせなければなりません。
誰が犯人か?なんて、監査人がしなければならないことではありません。
何が起きたのか?なぜ起きたのか?原状回復は可能か?再発防止策は考えられるか?
つまり、これからどう良くしていくか?という観点で、話ができなければいけません。
少なくとも〇週間以内に是正してください。なんていう態度では、全然意味がありません。
なぜなら、監査人のあり方は経営陣のあり方と同じだと受け取られるからです。
罪は犯した人間がわるいんやない。犯させたやつが悪いんじゃ!
と剛力彩芽さんもドラマの中でおっしゃっているとおりです。