内部監査体制の構築
現職で私のミッションは、内部監査体制の構築です。これまで、無資格ではありますが、JASDAQ上場~J-SOX対応等をクリアして来た者として、またゼロからの体制づくりを進めて行きます。
なぜ、内部監査が必要か
まず大前提として、内部監査部門を設置して、内部監査を実施しなければならないとしている規制はありません。
各法律や規制では、経営者が監査をする事になっています。
しかしながら、様々な法令等で求められている監査は、経営者が片手間で回す事が出来る程度のものではありません。
そこで、経営者直轄組織として、経営者の代わりに監査をする部門を設置する事になります。
現場にとってはうざい人達
監査体制づくりをはじめると、必ず直面するのが、現場からの拒絶反応です。
「忙しい中、面倒くさい資料の提出要求をしてくるし、業務プロセスの変更を求めてくるし、本当に邪魔だ。」
酷いときは、面と向かって怒鳴りつけられる事もあります。まあ、気持ちはわかります。
内部監査人はこのような時には、根拠強く、理解を求めるしかありません。
それぞれの会社には文化があり、どのように伝えれば理解していただけるかは、こうです!と示せるものではありません。
しかしながら、内部監査人として、どうあるべきか、どう思ってもらえれば、上手くいくかというのは、さほど複雑ではありません。
RPGに例えると
内部監査人は、RPGでいうと、街の人達です。RPGでは、ストーリーを進めていく際には、街の人達に話しかけて、様々な情報を集め、例えば○○の鍵を手に入れるには、北の洞窟にすむドラゴンを倒さなければならない。という事がわかります。
確かに街の人達すべてに話しかければ、ストーリーは前に進みますが、時間がかかります。これを一手に引き受けいるのが、内部監査人です。
「君の持ち物を見ると、○○の盾がないみたいだね。○○の盾がないと、南の城にすむトロールの攻撃を一撃でも食らうと全滅してしまうよ。この○○の盾を手に入れる為には、北の洞窟にすむドラゴンを倒して○○の鍵を手に入れてから、南の城に行く必要があるけど、今のレベルでは北の洞窟にすむドラゴンは倒せないな。LV20まであげてから向かった方がいい。」
こういう役割が内部監査人の役割なのです。
もう一つの顔、不正検査
では、このような役割だけしていれば良いかというと、それだけではありません。
不正を発見するという大切な役割があります。
現場で規定外の運用がみられた場合、大きく分けて2つの原因が考えられます。
ひとつは、誤解によるもの。もうひとつは、不正の兆候です。
ここで誤解といっているものには、面倒くさいとか失念してたとかいうものも含まれます。面倒くさいとか、失念するような仕組みは正式な手続きを経て、変更すれば良いのです。経営者は、非効率的なストレスの高い仕組みを無理やり守らせようとは考えません。無駄なので。
一方、不正とはどのようなものでしょうか?これは、自分の利益のためにルールを歪めたり、ルールの抜け穴を利用して、自分の利益を得ようとする行為です。
自分の利益を求めるというと、空出張とか、不正送金や仕入先にキックバックをもとめたりといったような犯罪行為をイメージしてしまいますが、それだけではありません。
自分の評価を上げるために、架空の売上を計上したり、部下にサービス残業実施をほのめかしたり、また逆に、がんばっているアピールのためにサービス残業をしたりする行為の全てが不正です。
不正も誤解によって行われているときには、是正を伝えるだけで改善される可能性が高いのですが、不正送金のような行為は、証拠隠滅を図られてしまう恐れもありますので、取り扱いには注意が必要です。
基本的には、問題事象を明確に示し、発生理由を細かく確認する事で暴き出す事が出来ます。
まず口頭で聞いて、文書を提出させ、疑問点について質問する。(文書が望ましい)
そして、それぞれの言い訳の証憑を集めていきます。
やりとりの途中で激昂したりしたら、ほぼクロです。なぜなら、やましい事が無い場合は、誤解を解くのが最優先事項であるので、普通はどうやって理解してもらうかに意識が集中するはずです。
激昂する人は、金銭的不正の有無はわかりませんが、何かやましいと感じている事が必ずあります。
内部監査人に必要なのは、知識とコミュニケーション能力
このように、内部監査人というのは、経営者の持つ権力を駆使出来ないにも関わらず、経営者の代役を勤めなければならない大変な役割です。
経営者が何を考えているのか?あとは、不正の兆候のパターン。法令等、社内規程の内容など、様々な知識を持っていなければなりませんし、誤解か不正かの嗅ぎ分けや、要求事項の伝達などを正確に実現するための、コミュニケーション能力も必要なのです。
そして、人に対する尊敬の気持ち
そして、絶対に欠いてはいけないのが、監査する相手に対するリスペクトです。不正しているような人に対しても、罪を憎んで人を憎まず。という姿勢が必要です。(懲戒解雇を進言することもありますが)
監査シリーズ次回は、内部監査体制づくりの為には、まず何からはじめるべきか?という事について書きます。
長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。